ベトナムは南北に長い国であり、地方によって気候や食習慣が異なるため、食材や味付けなどにも地域ごとの差があります。ベトナムの北部はキン族の古くからの土地でした。しかし、中部から南部にかけてはオーストロネシア語族系のチャム族の国、チャンパのものであり、そして南部はカンボジアのクメール系の地でもありました。

長い抗争の末、数100年前に現在のベトナムになりました。それでも、民族や文化的影響はいまだ残り続けています。

また、中国文化圏であるベトナムに対して、チャムとクメールはインドの文化的影響を深く受けていたために、中部以南ではそれらの融合した文化を持っています。同じベトナムと一言でいっても、それだけ食文化でも違いがあるということです。

そこで今回は、ベトナムにおいて、北部・中部・南部の特徴的な味付けを紹介したいと思います。

ベトナムハノイ

ロンビエン橋

Taken by Long Bun

ーベトナムの北部ー

北部の料理は他の地方に比べ全体に塩、ニョクマム(魚醤)を多用したやや塩辛い味付けとなり、ハーブもそれほど使用しません。中国に隣接しているために中国の影響を受け、味噌や豆腐、麺を使った料理が多く味つけにも影響があると考えられます。また、北部は、人口密度の高い土地でもあることから、必然的に全体としては豊かな土地ともいえます。恵まれた土壌のため良質な米がたくさん生産されます。そのために、少抵の塩辛い料理で大量にご飯を食べるというような食事になったのではないかと言われています。

また、北部の特徴はー年間の気温差や気候差が大きい、冬が乾季で寒く、気温が 10°C前後まで下がることもあります。そのため、炒め物など油を多用する料理を好む傾向にあります。

ベトナムフォー

フォーボー

Taken by Markus Winkler

ベトナムハノイ人

Taken by Call me Gohann

ーベトナムの中部ー

ベトナムフエ

ブン・ボー・フエ

ベトナムフエ2

バイン・ナム

中部の料理は唐辛子などを使った辛い味付けのものが多いです唐辛子を効かせた辛い味の傾向がチャム族の食文化との関連があると言われます。チャム族は、ベトナム南部の山岳地帯とカンボジアのメコン川流域に住む民族です。チャム族は2紀末から 17 世紀末までベトナム南部にチャンパ王国を建てて栄えましたが、ベトナム人に追われ、一部は山地へ、一部はカンボジアに逃れました。

チャンパはインド文化の影響を強く受けていましたが、カンボジアに入ったチャム族はほとんどがイスラム教徒になりました。ベトナムに多い非イスラム教徒チャム族は、ヒンドゥー教的要素とアニミズム的要素の混ざった伝統的宗教を保持しています。

カンボジアのチャム族は漁師、造船業者、水夫などで活躍し、また農民、商人としてクメール族と共存しています。しかし、イスラム教徒であることが、彼らの民族的独立性の維持を助けています。ベトナムのチャム族はベトナム文化の影響を強く受け、ほとんどベトナム化した人が多いですが、高地のチャム族は独自の文化をいまも保持しています。チャム族の食文化はインドの文化に影響され、スパイスを多用する食文化です。チャンバが滅亡した頃にはまた南米原産のトウガラはベトナムに到着してはいませんでした。大航海時代を経て、トウガラシが紹介されると、それ以前からスパイスを多用する文化を持っていたチャム族に、比較的安易に受け入られたのです。

ベトナムフエ3

グエン朝王宮

Taken by Kon Karampelas

さらに、ベトナム中部の都市フエは、かつてグエン王朝時代に都として栄えた町です。グエン王朝が置かれていたことがあるため、料理には宮廷料理の影響を受けた、米粉を水で溶いて蒸した料理や洗練された料理など、凝った料理が多いです。また、食材の飾り切りや芸術的な盛り付けなど、目でも楽しむことができるのが特徴で、「ブン・ボー・フエ(フエ風牛肉汁ビーフン)」バイン・ナム(米粉とエビのバナナの葉包み蒸し)」など、今ではベトナム料理の象徴となっているフエ料理も多いです。

ーベトナムの南部ー

南部の気候の特徴は乾季と雨季があり、年間の気温差が小さく、冬がほとんどなく、月間の平均気温は年間を通じて 25〜30°Cです。気候が熱いため、炒めより茹でものの方をよく食べ、そして鍋などで野菜を多用する料理を食べる傾向があります。

さらに、砂糖や旨味調味料、そしてハーブを多用するため、全体的に甘い味付けが多いです。また、南部の料理は昔からタイとカンボジアの影響をよく受けていて、サトウキビの汁やココナッツのジュース、ココナッツミルクなどの食材もよく用います。南部の甘いもの好きについては、気候が暖かいから当然のようにサトウキビができ、それで砂糖を得られるということがあるかもしれません。

しかし、サトウキビが栽培できるということと、砂糖が入手出来ると言うことは別だと考えられます。砂糖にするという工程はコストがかかるものであり、現代ならまだしも、遡って、昔から砂糖を多用していたとは考えにくいです。考えられることは、サトウキビのシロップを料理に利用する伝統があったか、あるいはホーチミンの家庭料理で見た、ココヤシのジュース、液体としての利用があったかということです。

ベトナム南部

コムタム

Taken by Thu Nguyen

ベトナム南部2

サトウキビのジュース

Taken by Daniel Bernard

サトウキビよりさらに可能性として高いと思われるのが、ココヤシです。ココヤシのシロップを南部地域ではよく料理に利用しますが、ココヤシはほのかな甘みを持つことが特長です。それ自体は人手がさほど難しいものではなく、農村部でも庭先に育てることが容易なものです。そのため、そのシロップを利用していた経緯があり、料理に甘みを付けるという伝統となり、砂糖が単に入手できるようになりました。

このように、地域によって味付けに面白い特徴があるのは、複雑な地形や歴史・民族が背景にあります。

ベトナム料理を食べる際、このような背景を思い出してみると新しい発見があり、さらにベトナムへの知識が深まると思います!

ベトナムの人

Taken by Dinh Sam Vu


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